マンションをもらうと贈与税はいくらかかる?特例についても解説

マンションをもらうと贈与税はいくらかかる?

「親からマンションをもらう予定がある。しかし高額な贈与税の支払いが怖い」という人も多いのではないでしょうか?

マンションをもらうと贈与税が発生しますが、贈与税には様々な特例があるので場合によっては贈与税が1円も課せられることがないケースもあります。

贈与税の計算方法とどのような場合に贈与税が課されないのか理解しておきましょう。

マンションの贈与を受けた場合の贈与税の計算方法と、控除措置について詳しく解説していきます。

贈与税とは?

手のひらに0%の文字をのせている女性

贈与税とは金銭・不動産・自動車などの財産の贈与を受けた場合、その金額のうち110万円以上の部分に対して課せられる税金です。

贈与税は贈与した人でなく贈与された人に対してかかるもので、例えば親から子供が現金の贈与を受けた場合、子供に対して贈与税が課されます。

贈与税には110万円の基礎控除があり、どんな人でも贈与を受けた財産のうち110万円は控除されます

例えば150万円の贈与を受けた場合、課税されるのは150万円-110万円=40万円なので、40万円の部分になります。

申告期限や納付方法について詳しく見ていきましょう。

申告期限は翌年3月15日

贈与税は1月1日から12月31日までの贈与について翌年の2月1日~3月15日までに申告しなければなりません。

この期限を過ぎると罰則が課せられる可能性もあるので、必ず期限内に申告してください。

一括納付が原則

贈与税は一括で納付することが原則です。

分割での納付は認められていません。

翌年3月15日までに前年の贈与税を一括で納付する必要があります。

ただし、一括での納付が困難な時には次の条件全てを満たしている場合のみ延納が認められ、分割払いが可能です。

  • 申告による納付税額が10万円を超えていること
  • 金銭で一度に納めるのが難しい理由があること
  • 担保を提供すること(ただし、延納税額が100万円以下で延納期間が3年以下の場合は不要)

理由については税務署と話しをした上で、税務署が認めるものでなければなりません。

一括での納付が難しい場合には、早めに税務署へ相談するようにしてください。

マンションをもらった時の贈与税

マンションのリビング

ではマンションをもらった時の贈与税の計算方法について解説していきます。

贈与税は以下の式で計算します。

贈与税の計算式

(贈与財産額-110万円)×税率-控除額=贈与税額

贈与税計算の基礎となるのが、贈与財産額です。

贈与財産額は土地と建物、それぞれの計算方法は異なります。

贈与財産の評価方法について詳しく見ていきましょう。

贈与財産の評価方法|土地の評価方法

贈与財産のうち、土地の計算方法は路線価を使用します。

路線価とは、国税庁が相続税や贈与税算定のために公表している不動産1㎡あたりの価格です。

贈与税算定の際には路線価を使用し、面積を乗じて計算します。

例えば、路線価が40万円/㎡、面積が200㎡、持分が50分の1であれば、不動産の評価額は次のようになります。

40万円×200㎡×50分の1=160万円

マンションの場合には、マンションの敷地全体の評価額を算定した後に、持分で按分して土地の評価額を求めなければならないという点に注意しましょう。

贈与財産の評価方法|建物の評価方法

建物の評価方法は土地と全く異なります。

贈与税算定の際の建物価格は、固定資産税評価額を使用します。

固定資産税評価額とは、市区町村役場が固定資産税を計算する際の基準になっている建物の評価額で、毎年春頃に送付されてくる固定資産税の納付書に記載されています。

この価格が2,000万円であれば、贈与財産の建物価格もそのまま2,000万円となります。

なお、固定資産税評価の価額は建築価格の約60%となっています。

そのため、マンションを購入する現金の贈与を受けるよりも、購入後のマンションの贈与を受けた方が贈与税は少なくなります。

例えば、3,000万円の現金を贈与されれば、そのまま3,000万円を基準に贈与税が計算されます。

しかし3,000万円でマンションを購入した後、購入したマンションの贈与を受ければ3,000万円×60%=1,800万円程度を基準に贈与税が算定されるので、現金より不動産で贈与を受けた方が有利です。

現金よりも不動産の贈与を受けた方が税金的には有利になるという点についても理解しておくとよいでしょう。

贈与税の2つの税率

贈与税の2つの税率

贈与税は簡単に言えば贈与財産から各種控除を差し引いて税率を乗じて求めます。

贈与税を計算する際の税率は「一般税率」と「特例税率」という2つの税率に分かれます。

それぞれの税率が適用される人と、税率と控除額について詳しく見ていきましょう。

一般税率

一般税率とは、特例税率に該当しない全てのケースで適用される税率と控除額です。

兄弟間で贈与をした場合などは一般税率の対象になります。

基礎控除後の課税価格税率控除額
~200万円10%
~300万円15%10万円
~400万円20%25万円
~600万円30%65万円
~1,000万円40%125万円
~1,500万円45%175万円
~3,000万円50%250万円
3,000万円~55%400万円

例えば、兄から弟へ3,000万円の不動産を贈与した場合の贈与税は次の通りです。

(3,000万円-110万円ー250万円)×50%=1,320万円

「贈与税は金額が大きくなる」と一般的によく言われますが、実際にこのケースでは贈与財産の実に半分近くが贈与税として課税されてしまいます。

一般税率が適用される贈与を行う場合は、贈与の可否について慎重に検討した方がよいでしょう。

特例税率

特例税率は、直系尊属(祖父母や父母など)から20歳以上の子や孫などへの贈与に適用される税率です。

例えば、親が20歳以上の子供に不動産を贈与した場合に適用されます。

税率は次の通りです。

基礎控除後の課税価格税率控除額
~200万円10%
~400万円15%10万円
~600万円20%30万円
~1,000万円30%90万円
~1,500万円40%190万円
~3,000万円45%265万円
~4,500万円50%415万円
4,500万円~55%640万円

例えば、親から子へ3,000万円の不動産を贈与した場合の贈与税は次の通りです。

(3,000万円-110万円ー265万円)×45%=11,812,500円

一般税率よりは特例税率が適用される親から子への贈与の方が税率が安くなります。

それでもこのケースでは1,000万円以上の贈与税が課税されるので、やはり贈与は税負担が大きな行為であるということは間違いないでしょう。

贈与税の3つの非課税制度

贈与税の3つの非課税制度

贈与税は特定の条件に合致すれば税率の安い特例税率が適用されますが、それでも高額な税負担になってしまうことには変わりありません。

国は、高額な贈与税を非課税にする仕組みを設けており、次の3つのいずれかに該当すれば贈与税がかかりません。

贈与税の3つの非課税制度
  1. 相続時精算課税制度
  2. 直系尊属からの住宅取得資金贈与の非課税特例
  3. 配偶者控除

贈与税の3つの非課税制度について詳しく理解していきましょう。

相続時精算課税制度

相続時精算課税制度とは、相続の一部を前倒しで行う仕組みです。

生前贈与を行う際に、贈与ではなく「相続を前もって行ったもの」と解釈するので贈与税はかかりません。

その代わり、贈与した側が亡くなった際に相続財産としてカウントし、相続税の課税対象となります。

贈与する側と贈与される側がそれぞれ次の条件を満たした場合のみ利用することができる制度です。

贈与する側の要件
  • 贈与される側の親や祖父母
  • 贈与する年の1月1日時点で60歳以上(2021年12月末までは、住宅取得資金に限り、60歳未満でも贈与可能)
贈与される側の要件
  • 贈与する側の子供または孫
  • 贈与される年の1月1日時点で20歳以上

この制度を利用すれば贈与財産のうち2,500万円までは非課税です。

ただし2,500万円を超える分に関しては20%の贈与税が課税されるので注意しましょう。

相続税の税率は次の通りで、贈与として課税されるよりも相続として課税された方が圧倒的に税率は安くなります

法定相続分に応ずる取得金額税率控除額
1,000万円以下10%
3,000万円以下15%50万円
5,000万円以下20%200万円
1億円以下30%700万円
2億円以下40%1,700万円
3億円以下45%2,700万円
6億円以下50%4,200万円
6億円超55%7,200万円

また、相続は基礎控除の額が3,000万円+(600万円×法定相続人の数)と大きいので、そもそも課税されない可能性もあります。

親からの贈与などで条件に合致するのであれば、相続時精算課税制度を活用して贈与税の支払いを抑えましょう。

直系尊属からの住宅取得資金贈与の非課税特例

両親や祖父母などの直系尊属から住宅の取得資金の贈与を受ける場合には、直系尊属からの住宅取得資金贈与の非課税特例を使用することができます。

この制度は、親や祖父母から住宅取得のための資金の提供を受ける場合に適用される制度ですが、制度の適用を受けるためには、贈与される側が次の条件を満たしている必要があります。

贈与される側の条件
  • 贈与する側の子供または孫
  • 贈与時、日本国内に住所があること
  • 贈与される年の1月1日時点で18歳以上
  • 贈与を受けた年の合計所得が2,000万円以下

さらに、贈与によって所得する住宅に関しても新築または中古それぞれで次の条件を満たしていなければなりません。

所得する住宅の条件
  • 家屋の登記簿上の床面積が40㎡以上240㎡未満
  • 家屋の床面積の1/2以上に相当する部分が専ら居住の用に供されるもの
  • 贈与の翌年3月15日までに居住していること、又は居住することが確実に見込まれていること
  • 家屋が新耐震基準に適合していること(中古住宅の場合)

非課税になる金額については住宅の質によって次のように異なります。

契約締結期間良質な住宅一般住宅
~2023年12月31日まで1000万円500万円

なお、良質な住宅の定義は次の通りで、贈与を受けて建築(購入)する住宅が次の条件を満たしている場合には、非課税になる金額が大きくなります。

良質な住宅の定義
  • 耐震等級2以上または免震建築物
  • 断熱等性能等級4または、一次エネルギー消費量等級4以上
  • 高齢者等配慮対策等級3以上

この制度は基礎控除との併用をすることが可能なので、控除額+110万円を非課税とすることが可能です。

配偶者控除

この制度は結婚して20年以上の夫婦が夫婦間で自宅や住宅取得資金を贈与した場合に非課税になるというものです。

詳細な条件は次の通りです。

配偶者控除の適用条件
  • 婚姻期間が20年以上
  • 居住用不動産の贈与または居住用不動産の所得資金の贈与
  • 贈与を受けた年の翌年3月15日までに入居しその後も継続して居住すること

この制度は最高2,000万円までの贈与が認められます。

さらに基礎控除との併用もできるので、合計で2,110万円まで非課税とすることが可能です。

まとめ

マンションの贈与を受けると、場合によっては贈与財産金額の半分以上もの高額な贈与税が発生します。

贈与税は基礎控除が少なく、税率が高いため相続税と比較して非常に高額になるのが一般的です。

贈与税は金額が大きく決して馬鹿にはできないので、贈与を受ける際には贈与を受けるべきかどうかについて慎重に決定しなければなりません。

また、親や配偶者から贈与を受ける場合には次のような非課税措置を利用できる場合があります。

  1. 相続時精算課税制度
  2. 直系尊属からの住宅取得資金贈与の非課税特例
  3. 配偶者控除

これらの措置の適用を受ければ、高額な贈与税が免除または大幅に削減できるので、条件に合致するのであれば必ず利用しましょう。