土地を相続するときの手続きや必要書類について。相続税などかかる費用も解説

土地相続の手続き・必要書類・相続税を解説

もし、明日いきなり「土地を相続する」ということになったらどんなことをすれば良いのでしょうか?相続とは、突然起こりうることです。

相続を経験していない人にとっては、難しいイメージを持っているかもしれません。

相続には手続きに必要な書類や相続税などの費用も発生するので、事前に一通り把握をしておくと慌てることなくスムーズに相続を行うことができるでしょう。

この記事では土地を相続するときの手続きや必要書類などの基本的な情報から、相続税などのかかる費用についても解説していきます。

土地を相続したらまずは「相続登記」から

不動産登記権利情報

土地を相続することになったら、まず「相続登記」という手続きを行います。

これは亡くなった方(被相続人)の名義で登記されている土地の登記簿謄本を、相続した方の名義に変更するという内容の手続きとなっています。

この相続登記は必ずしなければならない義務はないため、所有者が亡くなった後も名義変更をせずそのままにしておくこともあります。

相続登記をしないことで起こるデメリット

相続登記をしないと起こるデメリット

相続登記を必ず行う義務はありませんが、相続登記をせずに放置していると以下のようなデメリットが生じてしまうので注意しましょう。

相続登記をしないことで起こるデメリット
  • 土地の売却や借金の担保にすることができない
  • 手続きが面倒になっていく

相続登記をしないことで起こるデメリットについて、以下から詳しく解説します。

土地の売却や借金の担保にすることができない

相続登記を行っていないと、自分が所有している不動産として扱われません。そのため、土地を売却したり、借金の担保にする事ができないのです。

相続登記で自分の名義に変更してからやっと第三者に対して自分が所有している土地であるという法的根拠ができることになります。

手続きが面倒になっていく

法定相続人が複数名いる場合、遺産分割協議が終わるまでその土地は相続人の中で共有している状態になります。

相続登記を行う前に1人の相続人が亡くなれば、今度はその亡くなった人の相続人が所有権を相続することになるので、相続する関係者が増えていくことになります。

関係者が増えるということは当然手続きも増えて複雑になっていくので、どんどん手続きが面倒になってしまいます。

このように、相続登記はよほどの理由がないかぎり先延ばしにするメリットがないため、相続が決まったらできるだけ早く相続登記を行いましょう。

相続発生から相続登記までの流れ

相続発生から相続登記までの流れ

土地を相続することになったら、まずはじめに相続登記をすることは理解できたと思います。

では、相続が発生してから相続登記を行うまではどのような流れになるのでしょうか。

手続きの流れは遺言書があるかないかで異なるため、それぞれの場合で解説していきます。

遺言書がある場合

まずは遺言書がある場合の手続きの流れから見ていきましょう。

遺言書がある場合の手続きの流れ
  1. 相続財産調査
  2. 遺言書による遺産分割
  3. 相続登記の手続き

相続財産調査

初めに取り掛かるべきは、相続の対象となるものがどれなのかを調査します。

土地や住居といった不動産や、現金や株券、自動車や船舶、貴金属類といった動産も対象です。

相続は資産だけもらえるわけではなく、住宅ローンなどの借金や、支払いが終わっていない医療費や税金なども相続の対象となるので注意してください。

遺言書による遺産分割

遺言書がある場合、遺言書に記載されている内容に従って遺産を分割します。

なお、遺言書がある場合でも、話し合いなどによって相続人全員の同意があれば、遺言書に記載されている内容とは異なる遺産分割にすることも可能です。

相続登記の手続き

遺産分割を終えたら相続する土地の名義変更を行うため、相続登記をします。

相続登記は、相続する土地の所在地を管轄する法務局で申請を行います。

申請の際は必要書類の提出が求められるため、事前に用意しましょう。

遺言書がない場合

続いては、遺言書がない場合の流れを見ていきましょう。

遺言書がない場合の手続きの流れ
  1. 相続財産調査
  2. 相続人の遺産分割協議
  3. 遺産分割協議書の作成
  4. 相続登記の手続き

相続財産調査

遺言書がある場合と同様に、初めにすべき事は相続財産の調査から始まります。

相続人の遺産分割協議

すべての相続人と相続財産の分割について話し合い、だれがどの財産を相続するか決めます。

遺言書がない場合、話し合いをしてもどうしても遺産分割協議がまとまらないということもあります。

遺産分割協議をしても話し合いが前に進まない場合は、家庭裁判所に申し立てをし、遺産分割調停を利用することが可能です。

遺産分割協議書の作成

遺産分割協議を終えたら、「遺産分割協議書」を作成します。

遺産分割協議書とは、遺産分割協議で誰がどの財産を相続するか決めた内容を細かく記載する書類です。遺産分割協議書には相続人全員の記名押印をします。

相続登記の手続き

遺産分割協議書が作成され、土地の相続をする人が確定されたら相続登記の手続きを行います。

ここでやっと土地所有者の名義を相続人に変更することができます。

公平に土地を分割して相続する方法

公平に土地を分割して相続する方法

相続人が複数人存在し、土地を分割して相続するには以下4つの方法があります。

土地を分割して相続する方法
  1. 現物分割
  2. 代償分割
  3. 換価分割
  4. 共有分割

それぞれの分割方法について、以下から解説していきます。

現物分割

現物分割とは、土地を分筆(一つの土地を複数の土地に分割)して相続する方法です。

一般的に良く用いられる方法ですが、法令や立地などによって公平な分割が難しい場合があります。

代償分割

代償分割とは、相続人のうち1人が土地を相続し、その財産価値分の金額を他の相続人に支払う方法です。

この場合は土地を1人で所有する相続人に資力が必要です。

換価分割

換価分割とは、相続した土地を売却して、売却で得たお金を相続人で分配して相続する方法です。

この方法は土地をお金に換えることによって財産を公平に分けることができるため、現物分割と同様、よく用いられる方法です。

共有分割

共有分割とは、土地を物理的に分割することなく、相続人がそれぞれの割合で共有して所有する方法です。

この方法は1つの土地を相続人全員で共有することになるため、共有者1人だけの判断で売却や土地の利用をすることができず、共有者全員の同意が必要になります。

また、共有者1人が死亡するとその共有者の持分に対してさらに新しい相続人に引き継がれることになるので、将来的にどんどん共有者が増え、益々土地の扱いが困難になることが予想されます。

共有分割はこのようなデメリットが多いため、あまりおすすめされません。

土地を相続したらかかる税金

LANDTAX

土地を相続する場合、相続税がかかります。

相続税の他にも、土地を所有すると課せられる税金があるので、以下からかかる税金について一つひとつご紹介していきます。

固定資産税

固定資産税は、不動産を所有しているすべての人に課せられる税金です。

固定資産税は相続時に支払うものではなく、毎年1月1日時点で不動産を所有している人に対して課税されます。

固定資産税の額は、その土地の課税標準額に税率1.4%をかけた金額になります。

課税標準額は、土地の評価証明書に記載されているので確認してみましょう。

都市計画税

都市計画税は、さきほどご紹介した固定資産税と同じく、不動産を所有している人に課せられる税金です。

固定資産税と合わせて都市計画税の支払いをします。

都市計画税の額は、その土地の課税標準額に税率0.3%以下をかけた金額になります。

都市計画税の税率は、0.3%までと制限されています。

譲渡所得税

譲渡所得税は、相続した時には課税されませんが、相続した後、不動産を売却したときに発生する売却益に対して課税されます。

譲渡所得税は、不動産の所有期間によって税率が変わります。

売却した年の1月1日時点で所有期間5年以下の場合(短期譲渡所得)

所得税30.63%+住民税9%=計39.63%

売却した年の1月1日時点で所有期間5年超の場合(長期譲渡所得)

所得税15.315%+住民税5%=計20.315%

不動産を売却して利益(売却益)がでない場合は、この譲渡所得税は課せられません。

相続税

相続税は、相続が開始した時点で課税される税金です。

ですが、相続すると必ず相続税を支払わなければならないのかというと、そうではありません。

相続税がかかるのは、基礎控除額よりも遺産総額が高い場合です

基礎控除額の計算方法は以下になります。

基礎控除額の計算式

3000万円+(600万円×法定相続人の数)

例えば、相続人が2人なら4200万円が基礎控除額となるので、この場合遺産総額が4200万円以下であれば相続税はかかりません。

相続人が1人であれば基礎控除額は3600万円なので、相続税がかかる金額は最低で3600万円以上からと覚えておくと良いでしょう。

では、基礎控除額を超えた場合の相続税はいくらになるのでしょうか。

以下、相続税の速算表を参考にしていただければと思います。

法定相続分に応ずる取得金額税率控除額
1,000万円以下10%
1,000万円超~3,000万円以下15%50万円
3,000万円超~5,000万円以下20%200万円
5,000万円超~1億円以下30%700万円
1億円超~2億円以下40%1,700万円
2億円超~3億円以下45%2,700万円
3億円超~6億円以下50%4,200万円
6億円~55%7,200万円

土地相続の際に必要な書類

遺産分割協議書

続いては、土地の相続をするときに必要な書類を確認していきましょう。

被相続人の住民票(除票)

相続の際に、被相続人(亡くなった人)の死亡時の住所がわかるものとして、住民票が必要になります。被相続人の住民票は除票という形で発行してもらえます。

死亡後5年経つと除票が発行されないこともあるので注意してください。もし死亡から5年以上経過してしまい除票が発行できない場合には、戸籍の附票を用いることも可能です。

被相続人の戸籍謄本

法定相続人が誰かを確定するために、被相続人(亡くなった方)の生まれてから亡くなるまでの戸籍謄本が必要です。

もし被相続人の本籍地が生まれてから数回変わっている場合は、最後の本籍地から遡って、各役所から取得する必要があります。

その場合、まずはじめに、亡くなったときの住居地の役所から戸籍謄本を取得します。その戸籍謄本をみると一つ前の本籍地が記載されているので、今度はその一つ前の本籍地の役所から戸籍謄本を取得しましょう。そのようにして、生まれたときの本籍地まで遡って戸籍謄本を取得していきます。

また、取得した戸籍謄本は、被相続人の死亡日以降の日付である必要があります。

相続人の住民票・戸籍謄本

被相続人との関係を証明するために、相続人全員の住民票と戸籍謄本が必要です。

住民票は世帯全員分を取得し、本籍や続柄などすべての記載があるものを用意しましょう。

戸籍謄本も世帯全員分を取得します。

もし相続をしない相続人がいても、相続人全員分の住民票と戸籍謄本が必要なので注意してください。

遺産分割協議書

遺産分割協議とは、相続人全員が遺産をどう分けるか話し合うことです。その話し合いの結果、相続人全員が同意した内容をまとめたものが遺産分割協議書になります。遺産分割協議書には、誰がどの財産を相続するかなどの内容を細かく記載します。

遺産分割協議書の作成方法は、特に決められた様式はないので、手書きのものでも問題ありません。

ただし、誰がどの財産を取得するのかを正しく記載する必要があるので、遺産や相続人が多く複雑な場合などは弁護士に相談すると良いでしょう。

相続人の印鑑証明書

さきほどご紹介した遺産分割協議書には、本人たちの意思によるものであることを証明するために各相続人の実印を押印します。この実印の印鑑証明書を相続人全員分用意しましょう。

登記事項証明書

土地を相続するには、その土地の登記事項証明書が必要です。

登記事項証明書とは、その不動産の種類、面積、権利関係などが記載されている書類になります。

登記事項証明書は、不動産の所在地を管轄する法務局で取得できます。

固定資産税評価証明書

固定資産税評価証明書とは、相続登記をする時、登録免許税を計算するために必要な書類です。相続する土地の所在地を管轄する役所で取得することができます。

固定資産税評価証明書は毎年4月1日に更新されるので、最新のものを準備しておきましょう。

税金以外でかかる費用

電卓の上に豚の貯金箱が置いてある様子

最後に、相続に関連して税金以外にかかる費用にはどんなものがあるのか確認していきましょう。

相続財産の調査費用

相続財産の調査費用とは、その名の通り、相続する財産を調査するためにかかる費用のことです。

相続する財産が多ければ、その分費用がかかります。

土地を相続する場合の調査では、以下の書類と費用が必要になります。

財産調査に必要な書類とその費用
  • 名寄せ帳 一通300円
  • 固定資産税評価証明書 数百円
  • 登記事項証明書 一通600円

財産調査は個人で行うこともできますが、財産が多い場合は専門家に依頼することをおすすめします。

所有者名義変更に必要な書類の代金

以下は、土地の所有者の名義変更をする場合に必要な書類とその代金になります。

項目費用
被相続人の出生から死亡までのつながりがわかる戸籍謄本一通450円〜700円
被相続人の住民票の除票一通200円〜400円
相続人全員の戸籍謄本一通450円程度
不動産を相続する人の住民票一通200円〜400円
相続人全員の印鑑証明書一通200円〜400円
証明書等の取得をするための郵送費(往分)1件につき500円程度

登記を司法書士へ依頼したときにかかる費用

不動産に関する権利や登記を専門分野としているのは司法書士のため、相続登記に関しては司法書士に依頼するとスムーズに進みます。

報酬額は司法書士によって異なりますが、相場としては5万円〜10万円くらいになります。

不動産会社に支払う仲介手数料

換価分割で土地を売却するときは、不動産会社に仲介してもらうのが通常です。その際は、不動産会社に仲介手数料を支払う必要があります。

仲介手数料は、土地の売値が400万超の場合、売却価格×3%+6万円の額が上限額となります。

まとめ

土地に家の模型が置いてある様子

いかがでしたか?

土地を相続するときの手続きから必要書類、税金などのかかる費用まで解説しました。

土地の相続では、亡くなった方から相続人に名義変更をするため、相続登記を行います。

また、相続が発生したら相続税を計算して申告しましょう。

相続人が複数人いる場合は手続きが複雑になるので、税理士などの専門家に相談することをおすすめします。